クラフトビールとは

アメリカのブルワーズ・アソシエーションがクラフトビールの定義を成文化しているので、ひとまずそれを紹介します。
http://www.brewersassociation.org/pages/business-tools/craft-brewing-statistics/craft-brewer-defined

簡単にまとめると、クラフトビール(もしくはクラフトビールの醸造所)とは
・小規模であること
・独立していること
・伝統的であること
の3つの条件を満たしているということとなっています。
「小規模」の条件は、年間生産量が600万バレル(約70万キロリットル)までとされています。
「独立」は、クラフトビールメーカー以外の酒造メーカーに所有されたりコントロールされていないということが条件です。
そして「伝統的」に関しては、麦芽100%のビールを主力商品としているか、その大半が麦芽100%のビールであることとされています。ただし、味わいの特徴を強めるためにその他の原料を使っている場合は麦芽100%にこだわる必要はない。

もっとも、この定義はアメリカにおけるものであり、これをそっくりそのまま日本に転用することは難しい。
まず、「小規模」の件は日米では生産量の桁が大きく違います。
「独立」に関して言えば、日本の場合は日本酒メーカーや観光会社が母体となっているクラフトビールがあるので、そこが定義の境界線になると範囲が狭くなってしまい、そぐわない。
「伝統」並びに「麦芽100%」の概念も発泡酒や第3のビールという酒税法の違いが有るか無いかという点で違ってきます。
日本における「クラフトビール」の定義は、日本の事情に合わせ今後考えていくべきであり、確立していくことを願っています。それもまた楽しみのひとつである。
(日本ビアジャーナリスト協会 HP参照)

クラフトビールと大手のビールってどう違うの?
次の3つが大手メーカーのビールと違うポイントだと思うのですが、それぞれについて書いてみたいと思います。
・希少性
・多様性
・コミュニケーション
希少性
そこに行かないと飲めないビールもたくさんあります。
クラフトビールは小規模の醸造所が多く、生産される場所、量が決まっているものが多いです。一年を通して飲めるビールもありますが、季節限定のフルーツを使ったものや、ブルワリー同士がコラボレーションしたもの等、クラフトビールとの出会いは一期一会の場合も少なくありません。
一方、大手メーカーのビールは、とにかくブレずに安定供給することが重要です。また、多くの人に受け入れられることも大事です。多くの関係者がいる中で、芸術家的なビール造りよりも、大衆を意識したビール造りを求められています。それゆえに希少ではいけないのが大手メーカーではないでしょうか。

多様性
ビールには多様なスタイルがあります。アメリカで開催されたワールドビアカップ2016において審査されるカテゴリー(ビアスタイル)は96もあります。日本の大手メーカーが造っているビールは、10程度しかないのではないしょうか。クラフトビールは、そのスタイルに固執せずに造り手が自分の造りたいものを造るという側面もあるため、醸造家の数だけビールができると言っても過言ではありません。いろいろなクラフトビールを揃えているビアバーはもちろん、ひとつの醸造所で数十のスタイルを造っているところもあり、そのビールを飲み比べるのも面白いものです。クラフトビールは多様で、それゆえ様々な料理に合わせて楽しむことができるのも特徴です。

コミュニケーション
醸造家とのコミュニケーションも楽しい。
大手メーカーのビールはいろいろな工場で造られ、何十人ものスタッフが関わっています。誰が造ったのかは重要視されません。その点、クラフトビールに関しては、小規模だということも含め、醸造家と顧客の距離が近く、コミュニケーションが取りやすいのが特徴と言えるでしょう。コミュニケーションによって、味が変わるわけではありませんが、ビールを楽しむという点においては、生産者とのコミュニケーションがポジティブに働くことは大いにあります。クラフトビールに関してはマーケティングよりも醸造家や醸造所の個性がポイントで、それをどうデザインするか、伝えるかも重要です。
大手メーカーが望むのは「loyalty(忠誠)」で、クラフトビールを醸造しているブルワリーが望むのは「friendship(友好)」という違いもある気がしています。

 

ビールの酒類

ビールの酒類 特徴
ライトラガー

(ライトアメリカンラガー)
大麦麦芽に40%までの米またはトウモロコシを副原料にしたラガー。
高いレベルの炭酸にわずかな酸味が特徴で、ホップの苦味や麦芽の甘みはほとんどない。アルコール度数は4.2〜5.3%程度。
ヨーロピアンライトラガー ジャーマンスタイルの「ピルスナー」と比べ、色合いや飲み口がライトで味わいがクリーン。ホップの香りや苦味なども抑えめ。アルコール度数は2.5〜3.6%程度。
ボック 薄い赤胴色や茶色の液体で弱い炭酸をもち、麦芽の特徴が強い「ラガー」。北ドイツの都市、アインベック発祥。アルコール度数6.3%〜7.2%。
ライトハイブリッドビア
(ケルシュ、
ブロンドエール)
繊細でやわらかく、微妙なフルーツの香りを伴う。アルコール度数4.4%〜5.2%。
ポーター
焙煎した茶色麦芽を用いた点が特徴で、焦がした麦芽の芳香とホップの苦さが味わえる。
IPA
クラフトビールブームを牽引
クラフトビールを飲む醍醐味は、これまでに飲んだことのない「個性派」に出会えることだろう。その代表格が「IPA=India Paleale(インディア・ペールエール)」。
ホップのさわやかな香りと苦みが特徴のペールエールの中でも、ホップの量をさらに増やしたもの。アルコール度数が高く、その苦みが際立ちながらもフルーティ。クセになる味わいだ。18世紀末にイギリスからインドへビールを運ぶ際、劣化を防ぐためアルコール度数を高め、ホップを多量に使ったのが発祥だ。
ピルスナー
(ジャーマンピルスナー)
おなじみの爽快さ
ボヘミア(現チェコ)のピルゼンで誕生したホップの効いた爽快な淡色のビール。世界に最も普及しており、日本の大手メーカーのビールはほとんどがこのタイプ。アルコール度数は4.4%〜5.2%
ヴァイツェン
フルーティでまろやか
小麦麦芽を使った、ドイツヴァイエルン地方の伝統的なビール。ホップの香り、苦みが比較的弱く、フルーティな香りとまろやかな味わいが特徴。
スタウト
コクのある黒ビール
ローストした麦芽独特の香ばしさとどっしりとした飲み応えが特徴。イギリス発祥の「ポーター」がアイルランドでアルコール強化されたのが発祥とのこと。
アンバーエール 琥珀色が美しい
ローストした麦を使う、琥珀色のビール。黒ビールほどの強さはなく、さまざまな料理にも合わせやすい。苦みとコクと旨みのバランスが絶妙。
フルーツビール
ホップと果実のハーモニー
チェリー、リンゴ、イチゴ、ゆずなどフルーツの果汁やエッセンスを加えて造られるビール。ホップとフルーツの味わいのハーモニーが楽しめる。

 

用語の説明

用語 説明
TAP 「ビールサーバーの注ぎ口」という意味で「樽生ビール」のこと
ハンドポンプ レバーを動かしてビールを汲み出すことによってビールを注ぐ方式。炭酸ガスを加えることなく注ぐので炭酸ガスが弱い。
ボトル ボトル入りのビールのこと。
価格(1pt. 1/2pt.) ビアパブではビールを「パイント(pt.)」単位で提供することが多い。ただし、イギリスは「1UKパイント」が568ml、アメリカは「1USパイント」が473mlと容量が異なるからややこしい。
Alc アルコール度数。一般的なクラフトビールのアルコール度数は4〜10%程度。
夏はアルコール度数が低めっで スッキリしたビールが、秋や冬は煮込みなどの料理に合わせ、コクがあり、アルコール度数が高めのビールが好まれる傾向がある。
IBU 「International Bitterness Units」の略で、ビールがもつ苦味の程度を表す。国際苦味単位。この値が大きくなるほど苦味の強いビールになる。
SRM 「Standard Reference Method」の略で、アメリカで用いられる ビールの色合いを表す単位。値が大きくなるほど色が濃く、透過率が下がる。ヨーロッパでは「EBC(European Brewery Convention)」という単位を使用している。
エール 上面発酵で醸造される。大麦麦芽を使用し、酵母を常温で短期間で発酵させ、複雑な香りと深いコク、フルーティーな味を生み出すビールのスタイル。
エールのほとんどは、ホップを使用する。ホップはビールの保存を助け、苦味と香りを与えて麦芽の甘みとバランスを取る。
ラガー 下面発酵で醸造されるビールのスタイル。一般にキレの良い苦味となめらかでマイルドな味わいを持つ。